KONISHIのコーポレートミッションである、「明日を、動かす。」
この言葉に想いを乗せて、コニシ産業株式会社 代表取締役社長の本保敏広が、各業界の有識者と対談を行う「本保のアンテナ」。本保とゲストとの対話から、お互いの価値観や、これからどんな未来(明日)を作っていきたいのかといった前向きなメッセージを読者の皆さんにも発信していきます。
第4回目となる今回のゲストは、株式会社TOK 代表取締役社長 吉川 桂介さん。
世の中で必要とされる機構部品メーカーとして様々な製品を作りだしてきた同社は、2015年に吉川さんが代表となり、社名や企業理念、そしてオフィスを変えるなど、大きな変革を実施してきました。そして、コニシ産業も同じく本保が代表になってから同様にCI(コーポレートアイデンティティ)を変更したという共通点があります。
今回は、吉川さんと本保の対談からどんなストーリーが生まれるのか……ぜひご覧ください。
社名、企業理念、ロゴ、オフィス……さまざまな変化を取り入れた理由
本日の吉川社長と本保社長の対談は、板橋区小豆沢の株式会社TOK新オフィスにて行います。よろしくお願いします。
本保:この度はインタビューのご協力ありがとうございます。
吉川 桂介さん(以下、吉川):こちらこそわざわざお越しいただきありがとうございます。こちらのスペースはイベントなどを開催するときに使っていますが、フリーアドレスのオフィスなので、社員はもちろん私もここで仕事をしています。
本保:とてもオープンで気持ちのいいフロアですね。この新オフィスもそうですが、吉川さんが代表になってから、次々と変化を取り入れていかれたかを、取引先として近くで見ていました。
特に社名を「トックベアリング株式会社」から「株式会社TOK」に変えたのは大きな決断だったと思います。まずは、その背景から教えてください。
吉川:私が代表になったのが2015年です。以前は社名にベアリングと入っていましたが、他にもクラッチやロータリーダンパーなどいろいろな製品を扱っていたため、お客様からも営業サイドからも、ベアリングだけの会社ではないという声は挙がっていました。
そこで、ベアリングに刻印されていたTOKの3文字を社名としてブランド化していくことに決め、2017年に変更しました。
本保:その後、周りの反応はいかがでしたか?
吉川:以前から潜在的なニーズがあった社名変更だったので、タイミングが重要でした。
私が代表になり弊社の強みを探索した中で、「動きのあるものを創り出せる」という弊社“らしさ”を改めて言語化しました。
もともと企業理念の第一項に「”新しい価値”の提供で社会に貢献する。」という言葉がありましたが、当社に出せる新しい価値はと考えた時に「これまでにない”動き”を。」というスローガンを明確にできたのです。
今回のリブランディングは、その軸ができたことで躊躇なく変えられたと思っています。
本保社長もコニシ産業の企業理念など、コーポレートアイデンティティを一新しました。その点はいかがでしょうか?
本保:私も2015年に先代から引き継ぎ代表になりました。
コニシ産業の場合、オーナー家からバトンを受けたので、変えるもの変えないものをはっきりさせました。
まず、社名という暖簾は永続することに決め、組織のアイデンティティとなる企業理念やロゴなどは変える。その結果、「明日を、動かす」という言葉が生まれたのです。
偶然にも、御社の「これまでにない”動き”を。」と、弊社の「明日を、動かす」には同じ「動」という漢字が使われていて、時代が変化していく中で、常に動き続けるという点では共通認識で近いものがあるのではと、勝手ながら思っています。
吉川:おっしゃる通り、時代に合わせて変化を取り入れていくことはとても大事です。
弊社も2018年に本社を移転し、内装もかなりリノベーションして食堂やイベントスペースなども作りました。社員は皆、前向きに喜んでくれましたが、一転コロナ禍になり、基本は在宅勤務を推奨するようになりました。
オンラインも活用しながら働き方が変化する中で、組織のあり方も変化していくべきなのかなと感じています。ただ、ここ数年はあまりにも変化がありすぎて、それ以前の記憶がないくらいです(笑)。
本保:私も同じくです(笑)。
社員の健康は、会社経営の土台
本保:吉川社長は、シンプルに思考されることを徹底していると拝見していて感じました。例えば、企業理念も何行にもわたって「こうあるべし」みたいなものにするのではなく、1言で表現されています。
吉川:私たちの強みは何かなというところから、最終的にそこに行きつきました。
本保:言葉(=企業理念)は作って終わりではなく、社内外に浸透させていくことが大事です。何か工夫されていることはありますか?
吉川:名刺に企業理念を入れて、ことあるごとに思い出せるようにしています。
また、経営者としてはずっと言い続けることを意識しているので、例えば、月1回の朝礼の際は冒頭に企業理念について話したり、年4回発行している社内報でも同様に言葉が目に触れるように発信しています。
本保:言い続ける、伝え続けることは大事ですよね。私たちも、このHPで社員を紹介する記事や、私の対談コンテンツを作成し「明日を、動かす」を伝え続けています。
吉川:まさに今回の場ですよね。
対談コンテンツ「本保のアンテナ」では、お相手となる方の価値観を聞いています。吉川社長は、ここはゆずれないという想いはありますか?
吉川:一番ゆずれないものと言えば、働いている人たちについてです。
私の場合、「新しい価値=動き」と置き換えているので、その点を軸に行動していますが、弊社に関わる人がいかに良い人生を歩むにはどうしたらいいかを常に考え健康経営を取り入れています。
本保:健康経営というキーワードはいつ頃から打ち出しているのでしょうか?
吉川:本社移転を決めた2016年の夏ですね。健康経営という言葉は知人から聞いていました。
以前は、社内の喫煙率が高かったのですが、引っ越しを機に敷地内全面禁煙を打ち出したことがはじまりです。もちろんその当時は喫煙者から反発があり、話し合って解決していきました。
その後も、変化は徐々に取り入れていき、社内食堂の運営を行い食事を健康的なものにシフトしたり、工場ではラジオ体操を部署別に行ったり、全社で運動会を開催したり。今でも個々人の動きも合わせていろいろな健康経験の取り組みを実施しています。
健康経営を取り入れた結果、経営視点ではどんなことが変わりましたか?
吉川:会社なので、当然業績を考える必要はありますが、数字だけをずっと言っていたら良いかというとそうではありませんよね。関わる社員一人ひとりを見て、その人たちが元気になることが売上に繋がります。つまり、人にアプローチし、結果的に組織も良くなるという好循環を目指す経営にシフトしている最中です。
本保:私たちも同じです。基本的に心身ともに健康であることではじめて仕事ができてプライベートも充実するので、健康ありきの仕事です。会社が社員の健康に投資することで、売上に直結するわけではありませんが、20、30、50年くらいのスパンの中では間違いなく健全な会社経営につながるのではと思っています。
吉川:直接的とは言えないことですが、間接的には大きく影響してくるものですよね。
働き方にも動きを取り入れ、前へ
吉川:コニシ産業さんは、海外に若手を行かせているとお聞きしましたが、今も継続的に行っているのですか?
本保:はい。以前は研修として1週間ほどの同行がメインでしたが、今は立候補制で2年ほどのローテーションで海外赴任を経験させています。
その社員が何十年後かに幹部として行く際に、若い頃から文化、習慣、貿易などの日本との違いを経験していると親しみやすいんですよね。
吉川:長期展望を見据えてということですね。すぐにはできないことを時間をかけて行うというのはとても参考になります。
本保:急には無理なんだという失敗談からもそういう制度にしましたが、現地ではお客様との垣根が低くなってお付き合いしやすくなるので、帰国してからも相当な武器になります。
お客様とのゴルフなども当社は推奨していて、ゴルフ部も作りました。先輩社員のお下がりゴルフバックが社内でどんどん回っています。
両社、老舗企業としての歴史がありますが、シニア層や女性の活躍などについてはどうお考えでしょうか?
本保:歴史のある会社ではありますが年配社員はそこまで多くはなく、22歳で新卒として入ってきた若手が60歳、70歳の社員を知らないのは寂しいことだと思っています。そのため、定年は65歳になるのを想定していて、70歳も考えています。その歳まで働く意欲がある人と、そうではない人がいると思うので選択肢を作るようにしたいですね。
いろいろな人がいるという会社にしていくために、年齢が上がっても雇用を継続できるような仕組みづくりを始めています。
また、私たちの会社は30〜40代の社員が多く、やがて親が介護世代になります。そうなったら働きたくても働けなくなるケースも出てくるため、そういうケアもしていきたいと思っています。これから日本は労働人口が減っていくので、家庭を持った女性の活躍も不可欠ですし、働く環境は時代に合わせて常に考えています。
吉川:弊社でも最近、結婚した社員が相手のご都合で海外に行くというケースがありました。辞めざるを得ない事情ではありましたが、もし日本に帰ってくるのであればまた私たちのところに戻ってきてくださいというカムバック制度を適用しました。何年先になるかわかりませんが、このような受け入れはできるような形にしています。
働き方の変化といえば、最近はオンラインで仕事ができるようになりました。その点はいかがでしょうか?
吉川:コロナ禍前にオフィスを移転しフルリニューアルしたばかりでしたが、今はほぼ毎日在宅勤務で出社していない人も多く、地方に行ってもそこから仕事をするという働き方も今ならできるようになっています。海外出張もコロナ禍でほとんどできなくなりましたが、オンラインに移行したことで対応ができる範囲も増えたと思っています。
本保:私たちはお互いの顔を見ながら仕事をすることを大切にしているため、出社が原則です。しかし、以前から1対1のオンライン会議は行っており、コロナ禍になってからは複数の拠点を同時接続して会議や打ち合わせを行うケースも増えました。
メリットとしては、全員の時間調整が簡単で圧倒的に便利になったこと、デメリットとしてはお客様のA部署とB部署の思惑が違っているなど一枚岩になっていない時の温度感の調整が大変だと感じます。
吉川:オンラインだけで全て完結というのはまだ難しいですよね。私たちも実際に会って顔を見てというのはやはり必要なので、使い分けだと思います。
説明会だったらオンラインで、意見を出し合うのであれば対面で、そこは上手くやっていくしかないのかなと思っていますし、その上でも軸となる企業理念は大事だなと改めて感じています。
情報発信のために冊子を作る、こだわり
今までのお二人同士の関わりの中で印象に残っていることはありますか?
本保:私が吉川社長との関係性で印象に残っているのは、お父様(現相談役)から非常にスムーズに代替わりをされたことです。外から見ていてすごいなと思っていて、2015年の冬に一緒に飲みに行った時もそんな話をしたのを覚えています。
吉川:たしか銀座の火鍋屋に行きましたね。その後にワインバーにも1対1で行って。
本保:そうです。ちょうど吉川さんが社長に変わったタイミングだったので、「会社の体制はこんな風にやります」「私からはこんな風に変えていくんです」と話されていました。
吉川:いろいろな苦労話もあったかもしれませんが、私はもう覚えてはないですね(笑)。
ただ、私も本保社長同様に後から代表になったので、変えていくものもたくさんありました。
例えば、社長室を引き継ぎましたが、私がずっとそこにいるのはあまり良くないと思い、旧オフィスでは2つあった営業の部屋を時間を分けて行ったり来たりして、なるべくいろいろな人と会話をしていました。
その流れから、新オフィスにも社長室はあるのですが、ワンフロアにしてスタッフと同じ場所でいろいろな人と一緒に仕事をしています。
また、私の声を何らかの形で情報共有したいということで冊子も作りました。最初はとても大変でしたが、今では社員主導で社外報は年1回、社内報も年4回発行しています。
本保:とても素敵な取り組みですよね。中身も充実しています。冊子に拘っている理由はありますか?
吉川:データを渡して「好きな時に見てよ」だと、なかなか見ない人もいます。印刷して渡すことで家に持ち帰って見る人もいるし、そうすることで家族にとっても「お父さんが働いている会社はこんな会社なんだ」と伝えることもできます。また、工場勤務の社員はパソコンを扱っていない人もいるので、紙面による情報発信にはこだわっています。
本保:すごいですね。弊社も何かできないかなと、話を聞いていて思いました。
二人が動かしていきたい、未来
最後に、「明日を、動かす」をテーマに、今後のビジョンをお聞かせください。
吉川:事業の軸は崩さずに、強みを活かせるところで事業を展開していきたいと考えています。注力していくことと言えば、海外、特に欧米からは“動き”があるもので新しい用途の要望もいただくので、それに応えていきたいですね。また、医療業界も注力分野です。日本の医療を足掛かりに、海外も視野に製品や業界を拡げていきたいと思っているところです。コニシ産業さんはいかがでしょうか?
本保:私たちも今は圧倒的にOA事業が多いのですが、今後間違いなくそれ以外の分野も増えていきます。例えば、吉川社長がおっしゃった医療分野も、業界として課題がたくさんある中で御社のようなパートナー企業さんの知恵もお借りしながら何かできればと思っています。
商社という軸はぶらさず、新しいことにどんどん挑戦していきたいと考えています。
吉川:私たちが力になれることがあればご一緒していきたいですね。
本保:OA以外の業界のお客様も日に日に増えていますし、既存のお客様も新しいことに積極的にチャレンジしているので、新素材の提案なども行っている状況です。その数が増えれば増える程、間違いなくTOKさんの技術力を活かせる場面が出てくるなと思っているので、ぜひそこでも協働できれば嬉しいです。
吉川:是非、実現したいですね。コニシ産業さんとは40年近くの歴史あるお付き合いをさせてもらっていて、それをベースとしつつも事業関係では、新しい分野への挑戦にも貢献できる関係を築いていきたいと考えています。
また、会社 対 会社だけではなく、社員 対 社員の交流も含めてお付き合いさせてもらえたら、末長く関係が続いていくと思いますので是非よろしくお願い致します。
本保:こちらこそ是非よろしくお願い致します。また飲みに行きましょうね。