失敗なくして成功なし。株式会社グリット・亀岡本部長が語る、世界に通用する「人財」と「事業」の育て方

CEO本保アンテナ

特集 WEBマガジン 明日を、動かす

KONISHIのコーポレートミッションである、「明日を、動かす。」

この言葉に想いを乗せて、コニシ産業株式会社 代表取締役社長の本保敏広が、各業界の有識者と対談を行う「本保のアンテナ」。ゲストとの対話から、お互いの価値観や、これからどんな未来(明日)を作っていきたいのかといった前向きなメッセージを読者の皆さんにも発信していきます。

第5回目となる今回のゲストは、福島県にて事業を展開する株式会社グリット 新規事業企画本部 事業企画本部長の亀岡 寿行さん。社員の成長を重んじる経営思想は本保とも共通する点が多く、先日もコニシ産業の若手社員が「亀岡塾」に参加し、大いに刺激を受けました。

今回は、そんな亀岡さんと本保が対談を行います。それぞれの経営への想い、人財への想いについて率直に語り合う中で、どんなストーリーが生まれるか……ぜひご覧ください。

二人の出逢いと、互いの第一印象

本保:亀岡さんはコニシ産業の取引先企業である電機メーカーの技術部(機構開発)や資材部にて長く勤めておられました。その際は、当社の多くの営業社員が亀岡さんと一緒に仕事をし、お世話になっていますよね。私自身は長く総務を担当していたのでお会いする機会がなかったのですが、亀岡さんが会社を退職される少し前に初めてお会いしました。非常にエネルギッシュな方だという印象を受けたのを覚えています。亀岡さんは20年以上にわたってコニシ産業とお付き合いいただいたわけですが、当社に対する印象はいかがでしたか。

亀岡:資材部の仕事では多くの営業の方と出逢い、勉強させていただきました。中でもコニシ産業さんとのお取引は長く、そして深く、50名以上の方とお付き合いがありましたね。味があって、興味深い方々がたくさんいる会社という印象が残っています。

本保:20年というとかなり長い時間ですし、その間には経営陣の交代もありました。コニシ産業に対する印象はどのように変わりましたか?

亀岡:コニシ産業にはもともとフットワークの良い優秀な社員が多くいらっしゃいましたが、本保さんが社長になってからはよりいっそう雰囲気が明るくなったと思います。本保さんの経営者としての姿勢には私も同感を超えて共感するところが多くありますね。

本保:ありがとうございます。私も亀岡さんとは価値観が近く、亀岡さんが株式会社グリット#1で新たな仕事を始められてからも、若手社員の研修などいろいろとお世話になっています。今日はこの場を借りて、改めて亀岡さんにご自身のキャリア観・仕事観をお伺いしたいと思います。

退職後1年間の「充電期間」を経て、新たなビジネスを始動

本保:亀岡さんは今、株式会社グリットの事業企画本部長として商品企画を手掛けています。現在商品化を進めている「移動可能式プレハブ:グリットハウス」そして、特許を取得しテレビ番組にも取り上げられた「ゴミ拾い効率化グッズ:グリットハンド」など熱い注目を集めていますね。亀岡さんは大手企業を退職してから1年後に現在のお仕事を始められたわけですが、どのような経緯で現在の仕事に就かれたのでしょうか。

亀岡:退職後の1年間はいわば俗にいう「充電期間」であり、新しいこと、新しいもの、新しい場所、そして新しい「人」との出逢いを愉しみました。特にこういう仕事がしたい、といった目標を決めていたわけではありません。個人のキャリアは多くの場合、偶発的な出来事によって形成されるものであり、この偶然を計画的に設計する「計画的偶発性理論」というキャリア理論がありますが、それに近い考え方で1年を過していました。そんなとき、前職時代の同僚だったグリットの代表から声をかけてもらい、事業に参画することになりました。彼は私よりも6歳年下ですが、会社を辞めた後はバイクレーサーとして日本一の座という実績を残し、引退後会社を興して成功した非常にパワフルな人物です。

本保:偶発性を重んじるキャリア観は興味深いですね。前職の時からそのような考え方をお持ちだったのですか?

亀岡:いえ、最初は多くの会社員同様、計画を重んじてKPIを追っていました。でも、50歳を過ぎた頃から「自分の仕事における付加価値とは何だろう?」と考えるようになり、それは「社内外を問わず、人から頼られることなんじゃないか」と思うようになったんです。それまではなぜこんなに忙しいのかと苦しむこともありましたが、「自分の価値を認められているからこそ、指名されて忙しいのだ」と考えるようになってからは、頼られることが自分の仕事の付加価値なのだと思えるようになりました。そして、頼られたことの「日々の達成感」を大切にしてきましたね。

本保:たとえばどういう場面で「頼られている」と実感されたのですか?

亀岡:いわゆる火事場には私が必ず呼ばれるんです(笑)。たとえば東日本大震災のあった2011年は、中国の深圳で震災後の対応に追われていたのですが、それがようやく済んだ矢先にタイ拠点の責任者から電話がかかってきました。その頃タイでは洪水による未曾有の大混乱が起こっていて、タイの責任者が支援者第一号として私を指名してくれたんです。大変な役目でしたが、ものすごくうれしかったし、今でも光栄に思っています。

現場で失敗を重ねながら、「違和感アンテナ」を磨くべし

本保:当社の社員の中には、10年以上にわたって亀岡さんと一緒に仕事をしてきた者もいます。彼らが言うには、若い頃の亀岡さんと、課長時代の亀岡さん、部長時代の亀岡さんはそれぞれ全く印象が違うというんですね。失礼な表現かもしれませんが、そこには亀岡さんの人としての成長があったということなのでしょうか。

亀岡:それはあると思います。変わり続けることは私の信念ですから。ただし、変わらない軸をしっかり持った上で変わらなければいけません。私の場合、軸は三つあると思っています。一つ目は(当たり前ですけど)誠実さ。二つ目は変化に気づく洞察力。私はこれを「違和感アンテナ」と呼んでいます。そして三つ目は「誰にも負けない熱量」です。

本保:亀岡さんを一言で表すなら、「違和感アンテナ」という気がします。五感とは別の、いわば第六感のようなもので、真理や真実を見極めていらっしゃると感じることがよくありますし、お会いするときには必ず違和感アンテナの話が出てきますよね。私もそういう感覚をもっと大事にしなければと思うのですが、そのためにはどうすれば良いでしょうか。

亀岡:現場を経験することが大切だと思います。私の場合は機構設計を経験した後に工場で働いたので、そこで感覚が磨かれました。モノづくりの現場を実際に見て体験しないと、改善なんて絶対にできはしないですよ。

本保:おっしゃる通りです。亀岡さんは海外の工場もよくご存知で、その経験に基づいて話をされるのですごく説得力がある。残念ながら今は国内の工場が減り、現場体験が難しい時代になりました。当社では社員に海外出張や海外研修を積極的に経験させています。

亀岡:いわゆる三現主義ですね。現場、現物、現実を見ることが大切です。最近は何でもWeb会議で済ませようとする人が多いですが、相手と一緒に同じ現場を全員同時に観て、そして視てこそ課題も改善策も診えてくるものです。(見る→観る→視る→診る、この四段活用が実は肝)私も資材部時代、取引先に納期や品質の問題などが発生したときには、一緒に現場に行って問題を解決してきました。

他のメンバーは「私は無理です、行けません」と言うので私が行くしかなかったんです。失敗を恐れて行動できない人が多いのですね。私はいつも部下に「失敗してもいいよ」と言い続けてきました。ただし、失敗と向き合って反省し、是正することが条件。そもそも失敗というのは、現状よりも上の目標にトライするからこそ起こるのであって、これをしっかりなぜなぜ5回を使って原因分析をする、これがのちのち必ず力になるんですよ。

本保:当社も社員教育のベースはまさしく「失敗しなさい」なんですよ。失敗から学ばなければ本当の成功にはつながりません。でも、みんな「失敗しないように」という意識があるので、そう簡単には失敗してくれない。そこで私が大切にしているのは「若いうちから失敗させる仕掛けをたくさんつくること」。失敗してもいいという土壌をいかに醸成するかが、これからコニシ産業が永続するためのキモだという気がしています。

亀岡:「失敗してもいいよ」と言える人がトップであるということは、会社の組織運営にとって素晴らしいことですよ。本保さんが社長になってから会社の雰囲気がさらに良くなった一番の理由は、きっとそれですね。

お金よりも、人を笑顔にすることを優先する

本保:私たちはどちらも、サラリーマンとしてキャリアを重ね、今は経営に関わるステージにいるという点で共通しています。そこで改めて詳しくお聞きしたいのですが、亀岡さんのキャリアを決めた退職後1年間の「充電期間」はどのようなものだったのでしょうか。

亀岡:一言で言えば、新しい自分探しの冒険をした一年でした。サラリーマン時代のいろいろなプレッシャーから解放されて、先ほども少し話した通り、いろんな新しいものに出逢いました。

充電期間の最初のアクションでハローワークに初めて事務手続きに行ったときに、窓口の女性から「亀岡さんは大企業の部長を勤めていたのに、全然偉ぶらないですよね」と言われたことがあるんです。もう退職して看板が外れているのだから至極当然だと思ったのですが、世の中にはそうでない方も多いらしいですね。

私が新しい自分を探すために特に大切にしていたのは、同感を超え共感できる人を探し歩くこと。私の背中を押してくれる人がたくさん見つかりましたし、本当に楽しかった。

あるプロゴルファーの方が「人間はモチベーションで方向が決まる。お金が目的なら、それが達成できればそこで止まる。名声も同じだ。」ということをおっしゃっていますが、この1年間でそのことを改めて実感しました。

本保:亀岡さんにとってのモチベーションとは何ですか?

亀岡:人々の笑顔です。それを求め続ければお金はあとからついてくると思っていますが、私にとってはもうどうでもいい。利他主義といっても良いかもしれません。実は2023年には新たなビジネスにも挑戦する予定なのですが、目的はお客様の笑顔を見たいという、シンプルにただ只それだけです。

本保:普通に会社勤めをしていると、そういう境地に入るのはなかなか難しいかもしれませんね。私は若い頃からビジネス書をたくさん読んでいたのですが、偉大な経営者や成功者は必ず「誰かのために働け」と説いています。でも、若い頃は自分を充足することに一生懸命だから、ピンとこない。でも、ある程度自分を充足させることができてくると、お金でできることは限られているということがわかってきます。たとえば1兆円あれば何でもできると思いますが、一緒に喜んでくれる人、笑ってくれる人、ありがとうと言ってくれる人はお金では買えないし、それがないと心から楽しくはなれません。そして、お金と違って「人に喜んでもらう」という目標は無限に追求できるんですよね。地球上には80億人も人間がいるのだから、その全員を喜ばせる機会はまさしく無限にある。過去の偉大な経営者・成功者は皆、亀岡さんと同じ道を歩んで利他の境地に達したのではないでしょうか。

亀岡:勉強になるお話です。私はいつも、特に初対面の人に会うのが楽しみでしかないんです。この人達がどういう人達で、私にどういう刺激を与えてくれるか。私をどう変えてくれるのか、と。

私は、毎日今日はどんな出逢いがあるんだろう、と思って日々ワクワクしているんです。

確信しているのは、“人生を変えるのは出逢い”、だということです。そして前述の計画的偶発性理論に繋がるんです。

本保:いつも思うのですが、亀岡さんの言葉はいつも飾りがなく、シンプルですよね。

亀岡:熱量のこもった言葉でなければ、人に想いは伝わりませんから。

明日を動かす、二人の夢

本保:亀岡さんのこれからの夢や目標は、どのようなものですか?

亀岡:多くの人を笑顔にしたい。シンプルですが、それに尽きます。あとは、これまで私が多くの先輩から受けた「恩」を、若い人をはじめとする多くの人に分けてあげたい。つまりPay it Forward=「恩送り」の考え方でGiving Back=「恩返し」をしたいと思っています。

本保:それは素晴らしいビジョンですね。先日も当社の社員が福島で「亀岡塾」に参加し、ゴミ拾いを軸に亀岡さんからさまざまなことを学んだわけですが、今後は全国からたくさんの人が亀岡塾に集まれば良いと思っています。今の日本人は海外の人材に比べて弱いと感じることがあるのですが、もともと日本人が持っている良さを発揮すれば、十分に戦えるはず。亀岡塾はまさにそういう人材育成をする場所。幕末の長州・萩で吉田松陰が立ち上げた松下村塾は、近代日本の礎を築く多くの優秀な人材を輩出しましたが、亀岡塾こそ「令和の松下村塾」なのではないか、と思いますね。

亀岡:いや、そのお言葉はさすがに光栄すぎて消化できませんが……。しかし、確かに多くの日本人は海外に行くと怯んでしまう。経験値が足りないからだと思いますが、もったいないですよね。

本保:最後に、当社のコーポレートミッションである「明日を、動かす。」にちなんで、どのように明日を動かしていきたいか、お話しいただけますか。

亀岡:今私が手掛けているグリットハンドは、ゴミ拾いを効率的にできるという新しい付加価値を世の中に提供する画期的な商品と確信しています。これを日本のみならず世界に広げ、未来を動かしていきたい。特に私が仕事でお世話になったタイや中国は、まだまだゴミ拾いの文化が浸透していません。このグリットハンドと共に日本のゴミ拾い文化を醸成、そしてムーブメントを興すことで、これらの国に対しても「恩返し」をしたいというのが当面の目標としているところです。

本保:亀岡さんは五十代中盤の私よりも少し年上ですが、お話を伺っていると、これからもやりたいことが増え続けていきそうですし、それが活力の源になっているように見えます。実際、70代、80代になってもバリバリ元気な方は、必ず周りに人がいて、何か仕事をしているもの。亀岡さんにはぜひ一生そのまま走り続けてほしいですし、私も同じく、死ぬまで充実した仕事をやり続けたい。それが私の目標です。

#1 グリット
GRITとは、ペンシルバニア大学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏が提唱した理論で、「やり抜く力」または「粘る力」だと定義されている言葉のことです。
以下の4つの要素が必要だとされており、それぞれの頭文字を取ってGRIT(グリット)と呼んでいます。
Guts(度胸):困難なことに立ち向かう
Resilience(復元力):失敗しても諦めずに続ける
Initiative(自発性):自分で目標を見据える
Tenacity(執念):最後までやり遂げる

【取材・撮影/記事制作 インタビューライター 松田 然(もゆる)】