これからも挑戦し続けるために。企業ブランディングを通じて、本来の自分に立ち戻る言葉ができた

CEO本保アンテナ

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特集 WEBマガジン 明日を、動かす

KONISHIのコーポレートミッションである、「明日を、動かす。」

この言葉に想いを乗せて、代表取締役社長の本保敏広が、各業界の有識者と対談を行う「本保のアンテナ」。本保とゲストとの対話から、お互いの価値観や、これからどんな未来(明日)を作っていきたいのかといった前向きなメッセージを、読者の皆さんにも発信していきます。

第1回目となる今回のゲストは、株式会社それからデザイン代表取締役、株式会社smallweb代表取締役の佐野 彰彦さん。

企業ブランディングのプロフェッショナルである佐野さんは、KONISHIのコーポレートミッション「明日を、動かす。」を生み出し、コーポレートアイデンティティ(以下、CI)の構築からHPやロゴデザインなどの制作全般も担ってきました。

そんな佐野さんと本保の対談からどんなストーリーが生まれるか……ぜひご覧ください。

二人の出会いと、そのときの印象とは?

本保:今回は、佐野さんにコーポレートミッションの制作を軸に、ロゴやHPのデザインなどCI制作全般をお願いしました。

改めて振り返って見ると、初めて一緒に食事をした際に、佐野さんとは感性がとても近いと感じ、一気に距離が縮まったと思っています。

佐野 彰彦さん(以下、佐野):私が最初に本保さんと会ったときの印象は、紳士的で話しやすい方だなということ。同時に、人を見る目の厳しさ、鋭さを持っていて、私がどんな人間か見透かされているような、良い意味で人をしっかり見る方だなという印象を受けました。

本保:私はビジネスシーン以外の場所でも人を見るようにしていて、本人との相性がいいかどうかなど、普段の何気ない会話や行動からもそれを感じ取っています。いくら仕事の実績があっても、必ずしも相性が一致するわけではないからこそ、そこを大事にしています。

佐野:今回の仕事を通じて、KONISHIには、人間関係を大切にするカルチャーがあることをとても感じました。

佐野 彰彦(さの・あきひこ)
株式会社それからデザイン代表取締役、株式会社smallweb代表取締役。神奈川県出身、1974年生まれ。
「ビジネスとデザインの統合」をテーマに活動。音楽系企業にて新規事業開発を担当した後、デザイン業界へ転身。WEB領域に強いデザイナーとしてキャリアを積み重ねる。
モノの見せ方や伝え方だけを担当するデザイナーの関わり方について疑問を感じ、企業や商品のブランド開発段階から参加する仕事に注力するようになる。また、自らも事業家として、ITサービス「とりあえずHP」、コワーキングスペース「TURN harajuku」をプロデュース。IT分野を得意とするデザイナーであり、事業家でもあるという経験から、現在は中小企業や地域のブランディングの依頼も増えている。
著書に「経営者のためのウェブブランディングの教科書」「ウェブ担当者1年目の教科書」(共に幻冬舎)。2015年、2016年グッドデザイン賞受賞。
2020年10月〜2021年3月、渋谷のラジオ(87.6MHz)にて「渋谷のビザインラジオ」のパーソナリティを担当。
佐野彰彦プロフィール

佐野:本保さん自身は、はじめて会う人のどこをどんな風に見ているのでしょうか?「人を見るポイント」があれば教えてください。

本保:まずは直感ですね。例えば、究極のピンチのときに逃げるか逃げないか、あと自分の目線で、相手の本当の姿を見たいという欲求がわくか否かはとても大事で、そんな方には私自身のパーソナルな部分を話します。弱点や自分の根源にあるものを伝えて、相手の真の姿を見に行くと言ってもいいでしょうか。お会いした人全て、明日また会えるとは限らないので、この瞬間を大事にしたいという想いが根底にあり、また会いたいと思える方には、全てをさらけ出す様にしています。

佐野:なるほど。私は経営者と直接コミュニケーションが取れる仕事にのみ特化しているため、企業経営において経営者がたくさんの課題と向き合っていることを肌で感じてきました。

今回、御社のブランディングを担当させていただき、まずは本保社長が、ご自身の言葉で率直に想いを語っていただけていることが伝わり、それがとてもありがたかったです。

その想いや考えを言葉やデザインといった技を使ってわかりやすくまとめ、経営者自らが社内外に説明できるように伴走するのが私の仕事だと思っています。

改めて、今回そういったことが、本保さんともできたのかなと感じました。

コーポレートミッション、「明日を、動かす。」ができるまで

本保:コニシ産業は、企業ブランディングに取り組むのが今回が初めてでした。しかし、私がまだ若いころに在籍していた企業で、実は一度CIプロジェクトを経験したことがあったのですが、ロゴとコーポレートカラーを決めただけで、残ったものは手間だけ……何も響くものがなかったのです。だからこそ、今回は全く違うなと思いました。

佐野さんと一緒になって、いろいろと考え、思い、価値観のやりとりを繰り返す過程で、「明日を、動かす。」のコーポレートミッションの言葉が出てきたときは、正直、しびれましたね。

佐野:最初、このプロジェクトのお話をいただいたとき、ベアリングなどの特殊部品を扱っている商社という紹介だったのですが、お話を伺っていくと、他にも様々な商材を取り扱っていたり、新規事業にも挑戦していらっしゃる。どのような特徴を打ち出すべきか、ブランディングをしていくのが最初は難しく感じたのは正直なところです。

本保:どのタイミングで突破口が見えましたか?

佐野:商社は一見“何でも屋”に見えて、実はそうではないというのが、本保社長とたくさんの会話を重ねる中でわかってきました。全社員のアンケートも実施させていただき、KONISHIがこだわっているのは、商材や事業ドメインではないということが次第に理解できたと言ってもいいかもしれません。

ブランディングの基本は、「ここだけは他社に負けない」というポジションを定めることです。

また、ブランディングの語源は、放牧されている牛に“コレはうちの牛です”とわかるように焼き印を押すこと(焼き印のことを「ブランダー」と呼んだ)から来ていると言われています。(※諸説あり)。焼き印で個体を識別する=差別化、他と何が違うか明確にして周知していくことをブランディングと捉えると、通常は、「勝てる業種」を絞り込むことを考えます。

しかし、KONISHIの良さや特徴は、特定の業種にあるわけではなく、ビジネスの進め方や関係づくりの方法、また人や組織そのものにあることに気付かされました。

本保:KONISHIの強みは、まさに人間関係だと思っています。お客様の心を掴むことが何より大切だと信じている営業スタッフが多くいるため、人間関係から仕事を得たり情報を得たりできているのが企業としての強みにつながっています。常に動き続けることを推奨する社内カルチャーがあるのもそのためです。

佐野:人と人との関わりには、ビジネスを大きく動かす力があると改めて感じました。KONISHIは、まさに「良質な体育会系」。一見、非効率と思えるような動きやコミュニケーションにこそ、人の信頼関係が生まれるものだと思いますし、そこに大きな商機もある。

本保:はい、一見無駄に見えるようなことに誰にもまねできない価値があると思っています。

例えば、人に何かをお贈りする時、その人がどんな方で、何をお贈りしたら喜んで下さるのか?お相手の喜んで下さる顔を想像し、一つ一つ選ぶ。手間と時間は掛かりますが、お金には変えられない価値のあるものですよね。そういったことの積み重ねを私たちは大事にしています。

良いロゴには“マジック”が宿る

本保:「明日を、動かす。」は、自然と自分のものになっていて、すでに社内外で話しています。このミッションは、私たちが必ず戻れる場所になっている感覚です。

佐野:そう言っていただけて本当に嬉しいです。私が考える最高のブランディングとは、その言葉やデザインを手にした社長が「自分が欲しかったのはこれだ」と言ってくれることなんです。

本保:今までも何となく事業や会社の方向性はありましたが、この言葉があることで、より明確になり自信にもつながりました。同時に、このブランディング活動を通じて、関係ない事業の取捨選択ができたり、今後もこの言葉に合うものを選べるなどの基準ができたのも良かったですね。

佐野:ブランディングとは、やらないことを定義することでもあります。ビジネスや顧客との関係性で判断軸になる価値観が、「明日を、動かす。」に含まれているはずです。

本保:AIやロボットなどで効率化が進み、人がいらない世界観が進んでいますが、仕事は人との関係性で動かしていくのがKONISHIらしさです。

また今回、会社のロゴも佐野さんに作っていただきました。たくさんの素敵なデザイン案があった中で、このロゴは本能的に惹かれました。

佐野:ミッションを紡ぎ出すのは大変な作業でしたが、ロゴデザインはその言葉が決まっていたので、楽しみながら作業させてもらいました。アイデアもたくさん沸いてきた中で、このロゴになったのは、まるで運命かのような偶然もありましたよね。

私が思う良いロゴには、自分自身が想定しないようなマジックが宿るのです。今回、ミッションの「明日を、動かす。」を象徴するものとして「太陽」をデザインに取り入れたいと考えました。最初は朝日のつもりで作りましたが、本保社長の生まれ故郷である新潟の、日本海に沈む夕日のようだと言われたのは当初想定していませんでした。よく考えてみれば「明日を、動かす。」の言葉は、今日の始まりの朝日ではなく、明日に向かう夕日の方がつながります。

本保:このロゴを選んだ関係者たちの意見も自然にまとまっていきましたよね。

ミッションができてからが本当のスタート。二人が実現したいこととは

本保:今回のプロジェクトを通じて、デザインを単に作ることとブランディングは別ものだと明確になりました。コーポレートミッションを作るときに、小学生でもわかるメッセージにしたいという要望を出して良かったです。私たちの事業範囲は幅広いフィールドだからこそ、シンプルで、ありとあらゆる場面で伝えられる言葉が必要だったのです。

佐野:経営者が自分の言葉でミッションを語ることはとても大事なことです。自分たちが何をめざしていくのか、悩みが0の企業はないし、売り上げを伸ばすことだけが会社の存在意義でもないからです。

ブランディングには、経営者の意思でどういう会社にしていこうとしているかからスタートし、根底に流れるアイデンティティを抽出し見える化していく作業が必要です。その過程はとても大変ですが、そういう意識を持った経営者が1人でも増えるときっと日本は変わります。

本保:今回はおかげさまで私たちの原点となる言葉が明確に定まりました。今後、グループ会社をいくつも作りたいと思っており、事業としても組織としても形は変わっていくと思いますが、この原点は変わりません。いろいろな挑戦をしても立ち戻る拠り所のようなものです。

佐野:まさにそのように使っていただけると嬉しいです。

本保:私はときどき思うのです。日本人はすごいと思う反面、もったいない、と。それは、チャレンジしようとしている人が少ないからです。

だからこそ、挑戦しても本来の自分に立ち戻れる言葉があることの価値を若い世代にも伝えていきたい。私自身がその価値を伝える伝道師になるといってもいいでしょうか。そんなことも今回のブランディング活動を通じて感じました。

佐野:私のブランディングの仕事は、どの企業でも立ち上げに1年程はかかります。それでいて、ロゴや言葉ができてお披露目してゴールではなく、そこからがスタートなのです。だからこそ、本保さんの伝道師としての姿勢は支援していきたいし、これからも面白いことを一緒に手がけていきたいですね。

本保:ありがとうございます。今回は私自身人生はじめての対談となりましたが、佐野さんと一緒に取り組めたので楽しかったです。コロナ禍でのプロジェクト進行でしたが、企業のアイデンティティが揺らぐことはなく、むしろはっきりしました。大事にしなくてはいけないことを突き付けられたと思っています。この大事なことを軸に、これからも明日を動かしていきたいですし、佐野さんもまたご一緒させてください。

佐野:こちらこそです、これを機に末永くお付き合いをよろしくお願いします。